私は金物屋で働いています。今の時代、ホームセンターに行けば建築金物・工具・消耗品などなんでもかんでも揃ってしまいますよね。
しかもホームセンターの規模は巨大で圧倒的です。店舗の小さい金物屋が品揃えで勝てるわけもなく、金額においても大量入荷で安く売ることの出来るホームセンターに勝つことは不可能といっても過言ではありません。
それなのに、なぜ金物屋は潰れないのでしょうか?金物屋が潰れない理由と、取り扱っているサービスについてご説明します。
金物屋とは?
まず、金物屋というものが何なのかご存知でない方も多いかと思います。金物屋ならコレ!とも言える、一般的に取り扱っているものは以下の通りです。
- 「鍋・釜」などの生活金物
- 「ボルト・アンカープレート」などの建築金物
- 「ドライバー・スケール・ハンマー」などの工具類
- 「扉のノブ・取手・戸車」などの家具金物
一概に「金物屋」といっても今や曖昧な表現でしかありませんが、これらの製品を基準にそれぞれの金物屋さんが客層に合わせた独自の品揃えをしています。
金物屋はなぜ潰れない?
正直に言いますと、金物屋さんは潰れまくってます。
今でも生き残ることができている金物屋は、ホームセンターでは行っていないサービスをしているか、金物製品以外の商品を大きく取り扱っていることがほとんどでしょう。
また、多くのホームセンターが持つことのない、小さな金物屋が持っている大きなメリットは「掛売り」ができるということです。
サインやハンコを頂くことで先に商品をお渡しし、お互いに決められた支払日にまとめて支払いをするという、企業間では一般的な取引方法と言えます。
皆さんご存知の通り、大手のホームセンターは基本的に全て現金払いです。
しかし、多くの社員・下請けの職人がいる建設業者にとっては、それぞれが現金で購入してレシートを提出させるのは結構な手間です。まとめて商品を購入すると高額になることも多いため、現金の持ち合わせがなくて買えない…ということもあるんですよね。
このようなことから企業同士では、掛売りは大きなメリットになるのです。
金物屋が潰れない理由
金物屋のメリットについて簡単に説明しました。しかし、いくら掛売りができるといっても、品揃えが悪くて値段も高ければすぐに潰れますよね。そこまで儲かっていなくとも、潰れない金物屋には潰れないだけの理由があるものです。
配達業務を行っている
ホームセンターのようにトラック貸し出しは行っていなくとも、多くの金物屋さんは現場への商品配達を行っています。
大工や職人から直接電話注文があったり、現場監督から職人の現場への配達依頼など様々です。これも掛売りが出来る金物屋ならではの強みでしょう。
良い商品しか置いていない
ホームセンターは一般向けの「安くて質が悪い商品」も多く取り扱っています。
例として「ドリルの刃」を出しますと…ホームセンターでは色々な太さの鉄工ドリルが、10本1000円程度と格安で販売しています。ただ、これらは数回穴を開けただけで刃先がすぐダメになって使い物にならなくなってしまうのです。
しかし、一般向けの日曜大工程度であればこれくらいの性能で充分なのです。
対する金物屋が取り扱うドリルは、老舗メーカーである「ベッセル」や「ミヤナガ」等。これらは1本で1000円くらいするものもあるんです。
でも、仕事でやっている職人たちにとっては、すぐ使い物にならなくなる道具では仕事になりませんよね。多少値段が張るものでも、金物屋は業者の要望に答えた品揃えをすることで、リピーターや新規顧客を増やしていくというわけです。
市役所からの注文がある
市役所によっては、物品の購入は地元企業を優先するというところもあります。
学校への掃除用具の大量納品、役所の監理課などへ看板やバリケードの納品、他にも市が運営する史料館などがあれば様々な物品が必要になってきます。
ただし、高額な場合は地元企業複数の見積りから入札となるため、利益率は低くなることがほとんどです。それでも馬鹿にはできませんよね。
ホームセンターとは異なる商品を取り扱っている
カギは鍵屋、サッシはサッシ屋というのが基本の考えですが、金物屋の中にはアルミサッシ~カーポート等のエクステリアの販売までしているところもあります。
メーカーは個人に直接販売しないため、商社→小売→個人といった手順を踏んで商品は届きます。金物屋はこの中で小売に該当するため、施工業者から注文を受けることも少なくありません。施行は職人に任せ、物品は金物屋からの納品といった形式ですね。
他にもドアノブの出張修理や網戸の張替え、ブラインドの取り付けといった簡単な工事を請け負うことも。
まとめ
金物屋が潰れない理由についてまとめてみましたが、いかがでしょうか。
ホームセンターに負けている部分は多いものの、小さな金物屋だからこそ出来ることも実は多かったのです。
元々は金物屋として創業していても、既に金物を取り扱っていない企業もあるかもしれません。今はネットでたくさんのものが売れる時代ですし、ネットでの商品販売を強くしているところもあるでしょう。
儲かっているかどうかはともかく、今でも潰れていない金物屋はそれぞれの強みを活かした戦略をとって生き延びていることは間違いありません。